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桜島の噴気温度の遠隔測定に成功 研究活動 | 研究/産学官連携

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Academic year: 2018

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【ポイント】

・火山から放出された水素ガスの中に含まれる重水素同位体の比率から、遠隔より火 口温度(噴気温度)を正確に復元出来ることが明らかになった。

・桜島の火口は、同火山のマグマに匹敵する高温状態にあることが明らかになった。

・活火山でも、火口温度が活動度の現状把握や将来予測に利用出来るようになった。

桜島の噴気温度の遠隔測定に成功

名古屋大学環境学研究科(研究科長:神沢 博)の角皆 潤(つのがい うるむ) 教授、中川 書子(なかがわ ふみこ)准教授、産業技術総合研究所活断層・火 山研究部門の篠原 宏志(しのはら ひろし)首席研究員らの研究グループは、 活火山の火口から大気中に放出される気体成分の一つである水素ガス(H2)の重 水素同位体含有率が、放出される直前の温度を反映して変化する性質に着目し、 火口から放出された水素ガスを分析し、この中に含まれる重水素同位体の比率を 精密に測定した結果、大気中に放出される直前に、少なくとも930度を超える高 温状態にあったことを明らかにしました。

桜島(鹿児島県)のような活火山では、火口に近づくことが危険であり出来な いため、火口の温度を測定して、これを火山活動の現状把握や噴火予測に活用す ることは出来ません。このため、角皆教授の研究グループは、火口から放出され、 風下側に流れて来た水素ガスに着目し、セスナ機を使って採取して持ち帰り、こ の中に含まれる重水素同位体の比率を精密に測定しました。その結果、大気中に 放出される直前に、少なくとも930度を超える高温状態にあったことが明らかに なりました。

今後は、この新手法を利用して求めた火口温度の絶対値やその時間変化が、火 山活動の現状把握や将来予測に利用出来るようになることが期待されます。

この研究成果は、平成281126日付(米国東部時間)米国地球物理学連 合(American Geophysical Unionの科学雑誌Geophysical Research Letters オンライン版に掲載されました。

この研究は、平成26年度から始まった文部科学省科学研究費補助金(挑戦 的萌芽研究)の支援のもとでおこなわれたものです。

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【研究成果の意義と背景】

火口に近づくことが出来ない活火山でも、流下してくる噴煙を利用して、火口の温度 が遠隔から推定出来るようになった。今後は噴気(火口)温度が火山活動の現状把握や 将来予測に活用出来るようなる。また桜島は、観測が行われた2014年の時点で、既に マグマが火口直下に迫っていたことが明らかになった。

1 噴煙の中の水素ガスH2を利用した火口温度遠隔測定法の原理。噴煙中のH2HD/H2 比は、400度未満に急冷される直前にH2Oと同位体交換平衡に達していた時のHD/H2比を保 持している。同位体交換平衡に達していた時のH2HD/H2比は温度で決まるので、噴煙中の H2HD/H2比から急冷される直前の温度を求めることが出来る。

(3)

図2 水素ガス(H2)の重水素濃縮度(共存する H2O に対する相対値)と温度の関係。桜島 は誤差を加味しても、930度以上必要。

【用語説明】 重水素同位体:

自然界に存在する水素原子は、大部分(約99.98%)は陽子1個と中性子0個の原子核 から構成される質量数1の水素原子(1Hと表記)であるが、陽子1個と中性子1個の 原子核から構成される質量数2の重水素原子(2HもしくはDと表記)が0.02%前後混 在する。これらはいずれも安定な原子核で壊変はしないが、その相対比は自然界におけ る諸過程を経由する際に微小に変化する。

(4)

同位体交換平衡:

例えば、H2OH2のように、異分子間に共通の原子(H原子)が含まれていて、この 共通原子(つまり H原子なら 1HD)が何らかの化学反応を経由して両分子間を自 由に往来出来る状態に達している時、この状態を同位体交換平衡と呼び、両分子間の共 通原子の往来を媒介する化学反応を、同位体交換反応と呼ぶ。反応性の高い分子間は、 高温になると「同位体交換平衡」となることが多いが、火山噴気ガスの場合、少なくと も400度以上になると、H2OH2間がH原子の同位体交換平衡に到達することが知 られている。H2OH2間がH原子の同位体交換平衡に到達すると、H2D/1H比(重 水素濃縮度)とH2OD/1H比(重水素濃縮度)の相対値は、温度のみの関数となり、 同位体交換反応の種類には依存しなくなる。一方、室温の元では、H2OH2間の H 原子同位体交換反応はほとんど進行しない。

【論文名】

掲載雑誌:Geophysical Research LettersAGU米国地球物理学連合)

論 文 名 :Remote determinations on fumarole outlet temperatures in an eruptive volcano(活火山における噴気温度の遠隔測定)

著者:Urumu Tsunogai1, Lin Cheng1, Masanori Ito1, Daisuke D. Komatsu1,†, Fumiko Nakagawa1, and Hiroshi Shinohara2(角皆 1, 1, 伊藤昌稚1, 小松大祐1,†, 川書子 1, 篠原宏志 2(1.名古屋大学,2.産業技術総合研究所,現在:東海大学海洋 学部)

公表日:日本時間(現地時間)1126日 DOI: 10.1002/2016GL070838.

参照

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